頼り、頼られ、笑顔で締める | 佐伯海産株式会社
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頼り、頼られ、笑顔で締める

社長、3人まとめて雇ってください

長年勤め上げた業界大手のファッションストアが閉店することが決まり、次はどこで働こうかと思っていた頃でした。「さいき海の市場〇は人手が足りてない」と友人から聞いたんです。これも何かの縁と思い、誘ってくれた友人と3人で面談に臨みました。大胆で強気だった私は「3人まとめて雇ってください」と社長に伝えました。そんな逞しい姿を評価してもらえたのか、雇ってもらえることが決まりました。時が流れるのは早いもので、販売員として接客業に携わり12年が経とうとしています。

お客様のお買い物を、笑顔で締めくくる

鮮魚を取り扱う「鮮度壱番」がさいき海の市場〇(以下:海の市場〇)のすぐ隣にできたのは、2016年のことです。このタイミングで、私は海の市場〇から鮮度壱番へ配属が変わりました。同じ佐伯海産が運営する店舗で、商材も同じ海産物だったにも関わらず、配属された当初は「お客様が何を求めているか」をなかなか掴めずにいました。鮮魚という商材のせいなのか、それとも商材のラインナップの幅広さのせいなのか。しばらくは試行錯誤が続きました。

お客様の購入体験を笑顔で締めくくる

私たち販売員の役割は「お客様の購入体験の最後にステップに立って、その体験を笑顔で締めくくること」だと思っています。私たちの接客で、お客様にとっての鮮度壱番への評価が決まります。その如何によって、漁師や加工業者が届けてくれた新鮮で美味しい商品の価値をさらに高めることもできます。誰だって仏頂面でパパっと会計されるより、笑顔でニコッと会計されたほうが嬉しいですよね。お客様に会った瞬間に、自然にパッと笑顔になれるのが理想です。

もちろん笑顔でただ立っていればいいわけではありません。例えばお客さんに「大切な人への贈り物なんです。」と言われたら、どうすべきでしょうか。私は、自分たちができる精一杯で応えます。

「贈り物でしたら、風呂敷で一度包んでおきましょうね。」
「すぐお持ちになるんだったら紙袋に入れましょうか。」

お客様の「こうして欲しい」が明確な場合はもちろん、そうでない場合も、対話の中で先んじて想像して、提案する。そして最後に、ありがとうございましたと伝えて、笑顔で見送る。そこでお客様が「また買いに来たいな」という気持ちになってくれていたら、一番うれしいですね。

高校を卒業したばかりの若いスタッフにも「ニコッとしなさい」とはよく言います。人間だから間違ってしまうこともあります。お客さんや上司に怒られて凹んでしまうのも仕方ないと思います。ただ、次のお客さんと向き合うまでには、気持ちをきちんと切り替える。そうやってお客様一人一人と向き合うスタンスが大切なのだと思います。

頼ること、頼られることで心の余裕ができた

苦しいと思った時もあります。辞めたいと思ったこともあります。上司に注意されたり、怒られたり。そして自分を卑下してしまったり。理性と感情がうまくバランスしていなかったのかもしれません。こんなときに相談できる誰かがいてくれたら、と思うこともありました。

今はもちろん違います。誰かに頼られることがあり、私自身も頼ることがあります。オープン当初、レジ担当はレジ業務だけ。調理担当は調理業務だけと完全に分業体制でした。しかし今は、レジが混んでいれば、調理担当が飛んできてくれます。もちろん私たちも、手が空いている時間は調理加工を手伝います。少しずつ時間をかけて、従業員同士で助け合う雰囲気が生まれ、働きやすい環境が整いました。

「まずは私が」という思いで、とにかく動いてみることをこれまで意識してきました。やがて自分にも部下ができて、これまで私がやってきたことを、引き継いでくれるようになりました。私が育てたことになるかは、わかりません。でも、私自身は頼れる人ができて、心に余裕ができました。今は、とても気持ちよく仕事できている実感があります。

見ぬふりしながら「がんばれがんばれ」

新入りの従業員との向き合い方も、その根本は、お客様に対するものと同じなのかもしれません。自分にできることは何だろうと考えながら、伝えられることは何でも伝えてきました。少し声を張ってわざと耳に届くようにしたり、メモ帳を取り出して書き込んだり、目に届く場所で接客したり。まずは見てもらう、気づいてもらうことを意識してきました。

そして次のステップとして、任せてみるようにしています。私はよく、心の中で「がんばれがんばれ」と応援しながら、見て見ぬふりをすることがあります。自分でやってみないことには、成長はないと思うからです。そうして「●●さん、これで大丈夫?」と最終的に確認するのは、私の仕事であり、私の責任です。そうやってトライアンドエラーをしながら巣立っていく姿を見るのは、頼もしいし、何よりうれしいですね。

お客様に名前で呼んでもらえるって、うれしいです

私は従業員に「自分の名前で呼んでくれるお客様を増やしなさい」とよく伝えています。そして同時に、自分自身もお客様の顔や名前を覚えなさいとも伝えます。忙しく業務をこなす毎日の中で、親しいお客様の笑顔や、そのお子さんの成長する姿を見れるのが何よりうれしいんです。それがそのまま活力になっています。

何歳になっても、新しいことを学ぶ

60歳になったら、手習いで何か資格を取ろう。そう思い続けて、62歳になってしまいました。例えば、ととけん(日本さかな検定)なんていいなと思ってたのですが、残念ながら2021年で開催終了してしまいました。

私は鮮度壱番で野菜の仕入れを担当しているので、野菜のことをもっと知りたいと思っています。何か役立つ資格がないかと調べて見たところ、野菜ソムリエという資格が今の私にはあってそうでした。隙間時間を見つけては、少しずつ勉強を進めています。

もちろん資格に合格できたらいいのですが、書籍を買ってみて1日10分でも継続して勉強してみる。それもいいんじゃないかと思っています。勤続年数が5年過ぎたから、10年過ぎたから、だからもう勉強しなくていい。そうではないと思うんです。毎日、新聞を読んだり、本を読んだり、わからないところがあったらインターネットで調べてみたり。なるほど、と持ったことはメモ帳に残して。そうやって、身につけた知識で、お客様によりよい提案ができたり、役立つお話ができたらうれしいですね。そんな思いで、日々業務に携わっています。